ニーチェの妹エリーザベト-その実像

(著) 恒吉良隆

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[商品について]
―エリーザベトを知らずしてニーチェを語ることはできない―
哲学者ニーチェの妹にしてニーチェの思想を世に広く知らしめた功労者であり、一方その思想をナチズムへと引きずり込んだ張本人だと批判されるエリーザベト。今日にいたるまでドイツ精神史においてネガティブな評価を受け続ける彼女は、しかしながら女性の社会進出が難しかった時代に精力的で破天荒な生き方をした、行動力と才智に溢れる女性である。本書では、良くも悪くも「桁外れ」であったエリーザベトという女性について、ニーチェとの関わりを中心に、波乱万丈なその生涯を追いながら実像に迫る。ニーチェ哲学のキーパーソンともいうべき女性にスポットをあてた本邦でも類書のない一作。

[目次]
まえがき
第一章 幼年期・少女時代
第一節 生い立ちと家族
エリーザベトの誕生
ニーチェ家の人々
父親の死
第二節 エリーザベトの学校時代
ナウムブルクへ転居
仲のよい兄妹
強情っ張りの「ラーマ」
学童期のリースヒェン
ドレスデンの高等女学校で学ぶ
第三節 惑いの季節
生きる指針を求めて
フリッツの「初恋」に冷たい反応
エピソード
兄フリッツの大学入学
兄の考え方に疑念
「年をとっても愛し続けてね」
学術誌別巻の編纂作業を手伝う
ライプツィヒ大学で聴講
第二章 兄の助力者
第一節 兄との断続的な共同生活──バーゼル
初めてのバーゼル長期滞在
兄の家政婦役・秘書役・介護役
第二節 ワーグナー夫妻とニーチェ兄妹
バイロイト・サークルの一員に
ニーチェ兄妹のワーグナー傾倒
兄のワーグナー離反
第三節 兄妹のあいだの不協和音
ニーチェの転換期
ベルンハルト・フェルスターと知り合う
兄、一年間の病気休暇
兄、マイゼンブークらと共同生活
ニーチェの教育コロニー構想
兄との共同所帯に終止符
兄の草稿を焼却から救う
兄のバーゼル大学辞任
自主独立の道へ第一歩
第三章 「ルー事件」と兄妹の感情的疎隔
第一節 ニーチェとルー/エリーザベトとルー
ルー・アンドレーアス=ザロメ
ニーチェとルーの出会いと交際
エリーザベトとルーの抗争
兄への愛憎
兄妹の意思の疎隔
第二節 エリーザベトの短篇小説
小説執筆の試み
小説のあらすじと出来栄え
第三節 ニーチェ兄妹の「決別」
兄とルーの最後の邂逅
ルー中傷のキャンペーン
絶望感にあえぐニーチェ
兄との「決別」
第四節 フェルスターの信念に共鳴
兄と対照的な行動的人物、反ユダヤ主義者
フェルスターの反ユダヤ主義
エリーザベトの行動意欲
ニーチェの光明
フェルスター、南米へ現地調査
兄妹の和解、そして対立の再燃
愛の告白、結婚、そして南米移住
第四章 パラグアイにおける植民地生活
第一節 入植までのいきさつ
アスンシオンに二年間逗留
事業資金の不足──兄にも懇請
「新ゲルマーニア」への凱旋
第二節 「新ゲルマーニア」経営
「新ゲルマーニアの女王」
ニーチェ兄妹の感情的そご/兄の発狂
フェルスター夫妻の情宣活動
苦境に立たされた植民地経営
クリングバイルの糾弾の書
植民地経営の行き詰まり
フェルスターの自死
亡夫の植民地事業を継承
エリーザベト、一時帰国
残務整理、そして植民地に別れ
第五章 「ニーチェ資料館」の開設からニーチェの死まで
第一節 「わが生涯のもうひとつの重要課題」
ナウムブルクのエリーザベト
ガストとの確執/ケーゲルを編集主任に
第二節 資料館創設とニーチェ著作集の編集
「ニーチェ資料館」の開設
ケーゲル、ツェルプスト、ヘレン
第三節 エリーザベトとシュタイナー
シュタイナーへ接近
シュタイナーのニーチェ傾倒
ニーチェ文献総目録などの作成
病臥のニーチェに対面
第四節 ニーチェ評伝の出版/ワイマール移転
『フリードリヒ・ニーチェの生涯』第一巻
ニーチェ著作権の取得
資料館のワイマール移転
ケーゲル解雇/シュタイナー離反
第五節 「ニーチェ・メッカ」の本格的始動
母親フランツィスカの死/「ジルバーブリック荘」へ移転
メータ・フォン・ザーリスとの友情破綻
ジルバーブリック荘、脚光を浴びる
ハリー・ケスラー伯爵
資料館の環境整備と出費の増大
ペーター・ガストの再雇用
ニーチェの死
エリーザベトによる事実の歪曲
第六章 ニーチェ祭祀の展開
第一節 エリーザベトの精力的な資料館運営
ジルバーブリック荘の取得
問題の書『力への意志』
フェルデとの面識を得る
ニーチェ資料館の大改修
ニーチェ評伝の完結
第二節 社会的現象となったニーチェ運動
「スウェーデンの天使」ティール
ノーベル賞候補に推挙される
ベルヌーリの著書をめぐる法廷闘争
塗りつぶしのある出版
オスカー・レヴィのエリーザベト印象記
ニーチェ資料館財団の発足
第三節 エリーザベトの隠蔽・偽造行為
『この人を見よ』の公刊
ニーチェ書簡の改ざん・偽造
ガストの離反
第四節 ニーチェ記念施設建造計画
建設委員会の発足
計画の概要
第七章 第一次世界大戦からエリーザベトの死まで
第一節 エリーザベトと戦争
ティールへの戦況報告
『ツァラトゥストラ』戦時特別版の刊行
ニーチェと「戦争」
第二節 ワイマール共和国とエリーザベト
敗戦のショックと右傾化への道
ニーチェ協会の設立
いとこ関係の三人のエーラー
ニーチェ全集「グロースオクターフ版」と「ムザーリオン版」
名誉博士号の栄誉とノーベル賞候補
ドイツのインフレとニーチェ資料館財団の危機
ムッソリーニとの音信
第三節 「ヨーロッパ第一級の女性」
エリーザベト八〇歳
オスヴァルト・シュペングラー
エリーザベト批判
『原典校訂版・ニーチェ著作・書簡全集』の企画
エリーザベト八五歳
第四節 エリーザベトとヒトラー
ナチのニーチェ思想の囲い込み――アルフレート・ボイムラー
エリーザベトとヒトラーの出会い
ナチのニーチェ利用とエリーザベトの幇助
離反者、相次ぐ
新たな支援者
ヒトラー提唱によるニーチェ記念会堂建設計画
第五節 エリーザベトの最期
ヒトラーへの傾倒と最後の著書執筆
第六節 エリーザベトの生涯
終章 エリーザベト没後のニーチェ資料館
第一節 資料館周辺の動向
後継者マックス・エーラー
『原典校訂版・ニーチェ著作・書簡全集』の刊行途絶
「ニーチェ協会」の解散
一九四四年──ニーチェ生誕百周年
第二節 第二次世界大戦後の「ニーチェ」
資料館閉鎖とエーラーの獄死
東ドイツにおける「ニーチェ」呪縛
西側諸国におけるニーチェ・ルネサンス
トーマス・マンのニーチェ講演

エリーザベト・フェルスター=ニーチェ年譜

あとがき
【人名索引】
【参考文献】
【写真出典】
著者略歴

[担当からのコメント]
哲学上の巨人として今も大きな影響を与え続けているニーチェですが、本書はそのニーチェの思想をより深く知るための一書としてはもちろん、開明的なひとりの女性の生涯という視点からも興味深い内容になっています。ぜひご一読ください。

[著者略歴]
恒吉良隆(つねよし・よしたか)
1938年生まれ。1963年九州大学大学院修士課程修了。
ドイツ語・ドイツ文学専攻。福岡女子大学名誉教授。
主要著書:『アポロン独和辞典』(共著、同学社)
     『独検対策4級・3級問題集』(白水社)
主要訳書:M.リーデル『ニーチェ思想の歪曲―受容をめぐる百年のドラマ』(共訳、白水社)
主要論文:「ニーチェにおける〈虚偽〉と芸術」、「ニーチェにおけるユダヤの問題」など。

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