囲碁が象る「西遊記」ーー不立文字の世界をゲームと数学で読み解く
(著) 永松憲一
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―囲碁は物語を内包しながら『西遊記』を意味論の世界へと導く―
7世紀の中頃に遥かインドまで仏教の教義を求めた三蔵法師玄奘、その旅を題材にした『西遊記』は、お馴染みの孫悟空や沙悟浄、猪八戎らが活躍する伝奇物語として知られている。しかし全100話のこの物語を注意深く読むと、三蔵法師一行の存在や関係性など至る所に囲碁を思わせるような記述があることに気づくーー前著『日本将棋と西遊記』に続き、盤・石・ルールという囲碁の構造が物語のなかで不思議なほどに象られ類似するその謎を、仏教や易をはじめとする東洋思想を背景に数学の力も借りながら解き明かした、囲碁が誘う構造論的『西遊記』への旅。
[目次]
はじめに
第1章 孫悟空の誕生(第1~7話まで)
1、物語の大要(1~7話)
2、孫悟空の名
3、孫悟空と囲碁
4、お釈迦様の手の寓話
5、孫悟空の卦の形
第2章 三蔵法師の旅立ち(第8~13話)
1、2つの流れ
2、観音菩薩の登場(8話)
3、太宗幽冥界の旅(9~11話)
4、大法会:共時的な場(12~13話)
5、入子構造と三角州の数学:フラクタル
第3章 取経チームの形成(第14~22話)
1、話の概要
2、後天図方位図から
3、観音寺の段(16話と17話)
4、般若心経は何故烏巣禅師によって与えられるのか
5、黄風怪の段(20話21話)
6、結団式(22話)
7、風地観を詳しく
8、囲碁・意味のゲームとは?
第4章 旅立ち(第23~31話)
1、四聖と人参果の段(23~26話)
2、陰陽五行説の概念
3、エントロピーと能と浄
4、白骨夫人および黄袍怪の段(27~31話)
5、奎星と易
6、鎮子碁と黒番先手の碁
第5章 チームの再建(第32~43話)
1、物語の概要:通読すれば
2、36話宝林寺の段
3、西遊記と梁武帝・簫衍(ショウエン)
4、三蔵法師一家のチーム力
第6章 迷走そして中間目標への到着(第44~61話)
1、車遅国の段から通天河の段へ(44~51話)
2、独角兕大王から西梁国の段へ(50~55話)
3、にせ悟空の段から水火既済へ(56話~61話)
4、水火既済の卦
第7章 概観すれば
1、牛魔一族の謎
2、贖罪と和解の旅?
3、烏(ウ)と酉(ユウ)の置換
4、一行のチーム力と6耳獼猴
5、陳家を再び
6、亀と龍馬
7、魔方陣と碁盤の構造
第8章 団結・古希の道へ(第62~71話)
1、祭賽国の段(62話から63話)
2、荊棘嶺の段(64話)
3、孫悟空と猪八戒はなぜ仲が悪いのか。
4、小雷音寺の段(65話66話)
5、稀柿衕の段(67話)
6、朱紫国の段(68~71話)
7、古稀の数論
第9章 八戒の浄(第72~79話)
1、卦としての八戒を訪ねる
2、盤糸洞の段(72から73話)
3、獅駝洞三魔王の段(74~77話)
4、比丘国の段(78話79話)
5,55・70・89の不思議
第10章 子と系の再会(第80~83話)
1、地湧夫人の段(80~83話)
2、哪吒三太子はなぜ悟空を助けるのか
3、“タジョ”とは何者か
4、悟空の作戦
5、孫としての再統合の意味
6、五角形と89の関係
第11章 易の構造(第84~92話)
1、滅法国の段(84~85話)
2、観音菩薩の警告に悟空はどう答えたか
3、南山大王の段・鳳仙郡の段(85から87話)の概要
4、九霊元聖獅子怪の段(88~90話)
5、易による解題
6、玄英洞の段(91から92話)
7、木性の復活
第12章 悟空の講教(第93~97話)
1、天竺国にせ公主の段(93~96話)
2、うさぎ求婚のアナロジー
3、銅台府の段(97~98話)物語の概要
4、寇員外は何者?
5、頌を遡れば
第13章 大団円(第98~100話)
1、凌雲の渡
2、寇員外の生涯が意味すること
3、風地観と弟子達の役割
4、再び、62話へ
5、改めて“泰完”の意味を考える
6、再び陳家莊へ
第14章 共時的な世界
1、欄柯の歌が意味すること
2、無意識の探求:フロイト・アドラー・ユングの心理学
3、ソシュールの言語学から
4、そしてサイバネティックスの登場
5、ゲームが表す意識の構造
6、改めて囲碁を考えると
著者略歴
[担当からのコメント]
演劇や映画、ドラマ、漫画など様々な形で語られる西遊記は、今も私たちにとっては身近な物語です。本書では、そんな物語をその構造から機能、意味論までまるでソフトウェアを解析するかのように明らかにしていきます。西遊記という物語、そして囲碁というゲーム、それらが重なり合って表裏をなすとき、そこにはどんな世界が現れるでしょうか。ぜひご一読ください。
[著者略歴]
永松 憲一(ながまつ・けんいち)
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