現代の生老病死を考える――信仰と学問の場をつなぐ生命倫理
(著) 寿台順誠
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―「生まれる」とは、「生きる」とは、そして「死ぬ」とは―
老い、病、死、そして引きのばされる生。科学技術や医療技術の進歩が著しい現代を生きる私たちの生老病死は、いまこれまでにない新たな苦しみに晒されている――仏教者として仏の道を歩みながら、社会活動や研究として平和や人権の問題に取り組んできた著者が、いよいよ「安楽死」や「尊厳死」をはじめとする生命倫理のフィールドに立つ。「安楽死・尊厳死」をテーマに、「楢山節考」「高瀬舟」といった文学作品から具体的な裁判の事例まで取り上げ、文化論、法律論、仏教論の視点で生命倫理の難問に挑んだ、現代人必読の論考集。
[目次]
第1部 信仰の場における生命倫理(正雲寺同朋会公開講座記録) 現代の生老病死 ――引き延ばされる老・病・死と操作される生――
はじめに
1.四苦八苦
2.現代の老
3.現代の病
4.現代の死
5.現代の生
おわりに
第2部 学問の場における生命倫理(学術論文集) ――死別と安楽死・尊厳死――
第1章 死別の倫理 ――グリーフワークと喪の儀礼――
はじめに
1.グリーフワークの起源と展開
2.日本における喪の儀礼の現状と行方
おわりに
第2章 自律から共苦へ ――日本における「安楽死・尊厳死」裁判の再検討――
はじめに
1.自律から苦悩へ
2.日本における「安楽死・尊厳死」裁判の再検討
おわりに ――〈共苦の親密圏〉の再構築に向けて――
第3章 安楽死の比較文化論を構想する ――小野清一郎の安楽死論の検討を通して――
はじめに
1.小野清一郎の安楽死論の意義
2.安楽死の比較文化論を構想する ――法治と徳治――
おわりに
第4章 安楽死の法的問題と仏教の倫理 ―小野清一郎の安楽死論と仏教的応報刑論―
はじめに
1.安楽死論
2.仏教的応報刑論
3.業論・道義的責任論に基づく安楽死論に向けて
おわりに
第5章 「諦め」としての安楽死 ――森鷗外の安楽死観――
はじめに
1.「高瀬舟」(1916年)の課題
2.鷗外と安楽死
3.「諦め(Resignation)」としての安楽死
おわりに ――〈「諦め」としての安楽死〉の生命倫理学上の意義――
第6章 安楽死論事始め ――森鷗外「甘瞑の説」の意義と問題点――
はじめに
1.「甘瞑の説」の背景
2.マルティン・メンデルゾーンについて
3.“Über die Euthanasie”(原文)と「甘瞑の説」(鷗外訳)
おわりに――「高瀬舟」再考――
第7章 尊厳死の物語として読む「楢山節考」
はじめに
1.「楢山節考」はどのような意味において尊厳死の物語なのか?
2.亡き母への鎮魂歌としての「楢山節考」
3.「楢山節考」における尊厳のありか
おわりに
[担当からのコメント]
生命科学や医学が最先端の分野になればなるほど、宗教的な貌を持った問題がそこにあるのではないか、本書を読んでいると改めてそう感じます。その意味で生命倫理は、いま私たちがもっとも関心を寄せるべき分野の一つといえるのではないでしょうか。ぜひご一読ください。
[著者略歴]
寿台 順誠(じゅだい・じゅんせい)
1957年、真宗大谷派正雲寺(名古屋市中川区)に生まれる。1981年3月、早稲田大学第一文学部ドイツ文学科卒業後、僧侶として正雲寺に勤務するかたわら1982年4月、同朋大学文学部仏教学科に編入学して仏教(浄土真宗)を学ぶ。1984年3月、同大学卒業後、関西のいくつかの寺院に勤めながら靖国問題·部落差別問題等に関する仏教者としての社会的諸活動を経て、1990〜1993年、参議院議員翫正敏(当時)の公設第一秘書を務め、平和と人権に関わる諸問題(PKO・戦後補償等)に関わる。
秘書辞任後、1994年4月、横浜国立大学大学院国際経済法学研究科修士課程において国際関係法を学び(1997年3月、同大学院修了)、1998年4月からは一橋大学大学院法学研究科博士後期課程において憲法を学ぶ(2007年3月、同大学院退学)。また、この間、1999年には浄土真宗本願寺派光西寺に入寺(真宗大谷派から浄土真宗本願寺派に転派)、2001年に同寺住職に就任、「学びの場」としての寺作りを模索してきた。2021年12月、後継に住職を譲り、現在は同寺前住職となっており、今後は一個人として思想信仰の問題を究めたいと思っている。
さらに最近では、2011年4月より早稲田大学大学院人間科学研究科修士課程においてバイオエシックス(生命倫理)を学び(2014年3月、同大学院修了)、2016年4月からは早稲田大学大学院社会科学研究科博士後期課程において日本文化論を学んだ(2022年3月、同大学院を退学したが、現在、博士論文を執筆している。論文の仮題は「近現代日本の生老病死─文学作品に見る仏教と生命倫理─」)。
(光西寺ホームページ:http://www.kousaiji.tokyo/)
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