二十一世紀からロレンスを読む
(著) 古我正和
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―我々の前にはキリスト教による未来の永遠が、後には異教による過去の永遠がある―
代表作『チャタレイ卿夫人の恋人』で日本でも知られるイングランドの作家D.H.ロレンスは、その独特の感性で文明や近代化がもたらす未来をいち早く感じ取り、文学的に超克を試みようとした稀有の作家であった。本書は『ロレンス研究――西洋文明を越えて――』でロレンスの作品世界にこだまする声に目を向けた著者が、ルネッサンス以来ヨーロッパに連綿と続いてきている「近代」をキーワードに、その思想を21世紀の目線で読み解こうとした論考集である。いち早く「近代」を逃れようとしたロレンスの、その目線の先には何があったのか、文学的探究の興奮が止まらない一書。
[目次]
はしがき
第1章 ロレンスの近代認識 未来の永遠を探る
1 認識の発端 ロレンスの歴史感覚
2 ルネッサンスの光と影──ロレンスと近代
3 ルネッサンスの結果への批判
4 聖なる動物たちの栄光と堕落
5 詩にみる近代認識 「夕暮れの地」
6 「山ライオン」
7 20世紀の神の死滅と「不条理」
8 21世紀とキリスト教民主主義 ロレンスの未来認識
第2章 過去の永遠の模索 ユートピアを求めて
1 無意識の模索 闇の追放と再発見
2 ロレンスの自然観
3 アニミズムについて
4 原初の模索
(1) 「バラ」と「ブドウ」
(2) 「変革者」
(3) 「夕暮れの地」の原アメリカ
5 地下の地獄の世界
(1) 「西洋カリンとナナカマド」──秋の排泄物、熟成された酒
(2) 「平穏」の奥にある地獄
第3章 ロレンスが探った世界 ──21世紀に向けて──
1 擬人化より擬物化へ 新しいロマン主義
2 「馬で去った女」に見る擬物化より宇宙への方向
3 ロレンスの季節感 四季の巡り、円環する時間
4 Impersonalityについて Ⅰ
5 Impersonalityについて Ⅱ
6 ケルト体験と中世への憧憬
7 21世紀に向けて
第4章 ユートピアより新桃源郷へ
1 天空を通う旅人、マタイ──ロレンスの宇宙観
2 進化論を越えて 生命共同体の担い手たち
(1) アーモンドの花
(2) ロレンスと動植物
(3) 大地の燃えるマグマ 蛇への畏敬の念 弱者への共感
3 DoingよりBeingへ──ロレンスのポスト近代認識
4 過去の永遠の受け入れ
(1) ロレンスの時間感覚 薄明の世界と中世
(2) ロレンスのスポーツ観
(3) ケルトの循環文化
(4) ポスト近代への提言 『メキシコの朝』より近代市民へ
(5) 神話的時間
(6) 森の文化論の新らしさ 近代の反省
(7) ロレンスと教育
(8) Impersonality 新しい宇宙観
(9) 新ロマン主義
5 新しい進化論 棲み分け理論
6 太陽信仰より暗い太陽へ
7 新しい救世主の地上への帰還
8 新しい生き方 狂牛病と近代農業を越えて
あとがき
注
参考文献
*著者紹介*
[担当からのコメント]
中世は暗黒の時代、そしてルネッサンスは人間性を解放した時代、そんな旧態依然としたイメージはもう捨て去るべきではないかと、本書を読んでいると改めて思います。ルネッサンスの光は私たちに何をもたらしたのか、鋭敏な感性をもったロレンスは何を訴えていたのか、本書を通じてじっくりと考える機会を持っていただければ嬉しく思います。
*著者紹介*
古我 正和(こが まさかず)
1936年、滋賀県生まれ。
1961年、京都大学文学部卒業(英文学専攻)。
立命館大学、滋賀医科大学を経て現在は佛教大学文学部英米学科教授。
【著 書】
『1930年代世界の文学』(有斐閣,1982年)〈共著〉
『英米文学概論』(佛大通信部,1995年)〈共著〉
『ロレンス研究―西洋文明を越えて―』(大阪教育図書,1996年)
【訳 書】
『小説家・詩人ハーディ評伝』(千城,1981年)〈共訳〉
『メキシコの夜明け』(京都あぽろん社,1997年)
『解き放たれたプロミーシュース』(大阪教育図書,2000年)〈共訳〉
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