児童虐待という病理ー「抜け殻家族」の果てにある日本社会への提言ー
(著) 金子勇
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―毎日1人の子どもが、親からの虐待によって命を失っている―
家族や地域社会、子育て、社会規範などが変わりつつある現代の日本社会において、大きな「自壊要因」として喫緊のテーマとなっている「児童虐待」。本書では、この高度産業社会の頂点に顕在化した自壊要因を、先行する社会学研究と主にアメリカで蓄積されてきた児童虐待研究の成果や実際におきた虐待の事例をもとに、「抜け殻家族」をキーワードとする家族モデルも活用しながら、都市における児童虐待の問題と解決の道すじを理論的に指し示そうとする。児童虐待研究に新たな視座をもたらす示唆に富む一書。
[目次]
はじめに
第1章 児童虐待をどうとらえるか
1 社会学の力量が試される
2 先行的児童虐待研究の成果
3 家族研究成果を活用する
4 虐待事例の検討と考察
5 児童虐待家族モデル
第2章 児童虐待問題と抜け殻家族
1 児童虐待の現実をゆがめる統計手法の改変
2 児童虐待加害者のプロフィール
3 自らの参与観察経験から
4 社会的ネットワークの機能
第3章 アパシー論とアノミー論から見た家族規範の衰退
1 児童虐待の背景としての脆弱化した家族規範
2 エンパワーメントの条件を探す
3 政治への無関心とアパシー論
4 アノミー論とその指標
5 アノミー指標で測定する
第4章 児童虐待の大都市比較
1 児童虐待の趨勢
2 増加する児童虐待
3 児童虐待の都市比較分析
4 児童虐待の通告経路
第5章 児童虐待解決の補助線
1 児童虐待死の無念さと無策を超える視点
2 行政改革は定員問題ではない
3 児童相談所の定員未満問題
4 児童相談所への通告と介入
第6章 児童虐待防止策と「子育て共同参画社会」
1 児童虐待防止対策の強化に向けた政府の「緊急総合対策」
2 科学の力で虐待防止の「特効薬」成分を見つける
3 児童虐待の背景に家族機能の消滅
4 虐待死を防ぐための提案と「子育て共同参画社会」づくり
第7章 少子社会における児童虐待
1 研究方法と先行研究の成果
2 日本の少子化の動向
3 少子化と小家族化
4 都市の児童虐待に見る共通因子
5 家族支援の方法と課題
おわりに
『検証報告書』から
家族にみる共通要因
アソシエーション間の問題
参照文献
《著者紹介》
[担当からのコメント]
少子化や高齢化といった「言葉」だけでは表しきれない何かが社会に蔓延している、そんな風に感じる方も少なくないかも知れません。経済的には豊かになった日本は今、何に蝕まれ何を失おうとしているのか、真剣に考える時期が来ているのだろうと思います。そのための一助として、本書を多くの方にご活用いただければ嬉しく思います。
《著者紹介》
金子 勇(かねこ・いさむ)
1949年 福岡県生まれ。
1977年 九州大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。
現 在 北海道大学名誉教授。文学博士(九州大学,1993年)。
第1回日本計画行政学会賞(1989年),第14回日本都市学会賞(1994年)。
札幌市・市政功労者(2022年)
著 書 『コミュニティの社会理論』アカデミア出版会,1982年。
『都市高齢社会と地域福祉』ミネルヴァ書房,1993年。
『都市の少子社会』東京大学出版会,2003年。
『少子化する高齢社会』日本放送出版協会,2006年
『コミュニティの創造的探求』新曜社,2011年。
『日本のアクティブエイジング』北海道大学出版会,2014年。
『「地方創生と消滅」の社会学』ミネルヴァ書房,2016年。
『日本の子育て共同参画社会』ミネルヴァ書房,2016年。
『社会学の問題解決力』ミネルヴァ書房,2018年。
『ことわざ比較の文化社会学』北海道大学出版会,2020年,ほか。
共 著 『マクロ社会学』新曜社,1993年,ほか。
編 著 『高齢化と少子社会』ミネルヴァ書房,2001年。
『高田保馬リカバリー』ミネルヴァ書房,2003年。
『計画化と公共性』ミネルヴァ書房,2017年。
『変動のマクロ社会学』ミネルヴァ書房,2019年,ほか。
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