「不起立」教師、教育を語る――きみたちがいる限り民主主義は死なない
(著) 立川秀円
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―教育をするということは、この国について考えることに他ならない―
高等学校は国民的教養の基礎を学ぶ場であり、21世紀を担う高校生たちにしっかりした基礎学力を身につけさせ、人類の生み出した「普遍的な価値をもつ」優れた文化遺産を継承できるようにしなければならない――そうした問題意識のもと、社会科・公民科の教師として東京都立高校に36年間勤務した著者が、「日の丸・君が代」強制など都立高校の変容の実態と共に未来を担う若者たちに向けて贈る教育実践の記録。
[目次]
まえがき
旧版のまえがきより
第一部 若者へのメッセージ
第一章 二一世紀は若者がつくる
一 二一世紀――核兵器と戦争のない、環境と福祉の世紀へ
二 世界の名作文学を味わい豊かな人生を
第二章 都立高校の自由・自主を守るために
一 都立高校の伝統があぶない――都立高校「改革」は何をねらっているのか
(一)「平和と平等」の理念から「差別と競争」の都立高校へ
(二)職員会議中心の民主的な学校運営から校長・管理職中心の「学校経営」へ
(三)都立高校生の意識改革がねらわれている――教育内容への本格的な介入
二 東京都教育委員会の「日の丸・君が代」強制と教育の自由を守るための教職員の裁判
(一)一〇・二三通達から創立記念式典での不起立と戒告処分へ
(二)予防訴訟の提訴から第一回口頭弁論での意見陳述へ
(三)卒業式・入学式での「日の丸・君が代」の強制と教職員の大量処分
(四)予防訴訟のたたかいと被処分者の東京都人事委員会審理でのたたかい
(五)一〇・二三通達は憲法・教育基本法に違反する――予防訴訟・難波判決
第三章 最高裁は司法の良心を示したのか
一 都立高校から排除された私たちの裁判と私の陳述書
※東京都教育委員会(都教委)と教職員との間でどんなことが争われたのか
二 三つの最高裁判決──都教委の暴走に一定の歯止めをかけたが?
(1)思想・良心の自由を「間接的に制約」するが合憲──二〇一一年五月~七月の最高裁判決
(2)減給・停職一月処分の取り消し──二〇一二年一月一六日の最高裁判決(第一小法廷)
(3)再雇用の採用拒否を容認──二〇一八年七月一九日の最高裁判決(第一小法廷)
第二部 民主主義の思想と多様な見方を学ぶ 社会科(公民科)の授業
第一章 民主主義の思想を学ぶ ――歴史の中で思想をとらえる倫理の授業
一 福沢諭吉からはじまる近現代中心の「思想」学習
(一)文明開化と福沢諭吉(一八三四~一九〇一年)
(二)自由民権運動と中江兆民(一八四七~一九〇一年)
(三)近代民主主義の思想――ロック、ルソー、カント
(四)近代日本のキリスト教と内村鑑三(一八六一~一九三〇年)
(五)国家主義と教育勅語
(六)一五年戦争と日本のファシズム
(七)日本国憲法と戦後民主主義の理念
(八)マルクス・エンゲルスと社会主義の思想
二 青年期の課題と読書――まともな本を読んで、頭と心を豊かにしよう
三 二分間スピーチで友達を再発見する
四 班討論と発表――生徒が活躍できる場をつくる
第二章 いろいろな考え方があることを知った ――現代社会の授業での主体的な学習の取り組み
戦後日本社会の原点を学ぶ・「現代社会」教材化の基礎資料
一 「現代社会新聞」づくり(一九九〇年度~一九九三年度)
二 班討論やディベート(一九九〇年度~一九九三年度)
三 夏休みの課題――「戦争と平和・原爆を考える」
四 「現代社会」を学んでどんな力がついたか(一九九三年度の生徒の作文から)
第三章 被爆者の話を聞き平和を考える広島・長崎修学旅行
一 都立保谷高校でのヒロシマ修学旅行(一九九四年)
二 長崎・平戸・北九州修学旅行(一九九四年)
第三部 高校生は素晴らしい力をもっている! 文化祭を楽しむ
第一章 全クラス参加の燃える文化祭 ――保谷高校文化祭小史(一九七三年~一九九六年)
一 燃える文化祭のしくみと伝統は、どのようにしてつくられたか
(一)文化祭の基本方針とテーマを重視するホームルーム討論
(二)コンクールの仕方と再演・再上映の制度
(三)文化祭の形式と開会式行事の歩み――オリコンからクラスのPRへ
(四)部門別の講習会
二 保谷高校文化祭の二四年(一九七三年~一九九六年)
(一)文化祭はどうあるべきか〈模索期 第一回(一九七三年)~第四回(一九七六年)〉
(二)伝統形成期と第一期映画ブーム〈第五回(一九七七年)~第七回(一九七九年)〉
(三)第一期演劇ブームの時期〈第八回(一九八〇年)~第一一回(一九八三年)〉
(四)第二期映画ブームの時期〈第一二回(一九八四年)~第一四回(一九八六年)〉
【コラム】 大型演劇の会場作り=「校具移動」
(五)第二期演劇ブームの一〇年間〈第一五回(一九八七年)~第二四回(一九九六年)〉
【コラム】 二年九組「H・R通信」(立川クラス・一九八九年一〇月二日・第六号)より
【コラム】 文化祭の組織者・文化委員会の総務会(一九九二年頃の様子)
【コラム】 都立保谷高等学校─自由な校風のもと文化の花開く(教育庁報・一九九五年九月)
第二章 石神井高校・杉並高校定時制の文化祭作品へのコメント
一 石神井高校文化祭(一九九九年)より
二 杉並高校定時制文化祭(二〇〇三年)より
あとがき
〈初出一覧〉
〈著者略歴〉
[担当からのコメント]
教育の理想は実践を伴わなければ意味がないとすれば、本書はその実践を長年にわたって継続し、生徒たちからの様々なフィードバックがまとめられているという点で、教育について考えるうえで非常に価値のある内容になっていると思います。ぜひご一読ください。
〈著者略歴〉
立川 秀円(たちかわ しゅうえん)
1946年 岐阜市に生まれる。
1969年 早稲田大学第一文学部哲学科西洋哲学専修卒業。
1970年~東京都立墨田川高等学校定時制(8年)・都立武蔵村山東高等学校(6年)・都立保谷高等学校(12年)・都立石神井高等学校(6年)・都立杉並高等学校定時制(4年)に勤務する。
2006年 3月末、退職。
2006年〜2014年2月 首都大学東京(現東京都立大学)非常勤講師
現 在 歴史教育者協議会会員/全国民主主義教育研究会会員/平和・国際教育研究会会員
共 著
1972年 『学習資料・倫理・社会』(ほるぷ出版)
1981年 『学習資料・現代社会』(ほるぷ出版)、『高校現代社会をどう教えるか』(地歴社)
1983年 『学習資料・倫理』(ほるぷ出版)
1987年 『楽しくわかる現代社会100時間』(あゆみ出版)
1990年 『楽しくわかる現代社会100話』(あゆみ出版)
1999年 『総合学習ハンドブック』(平和文化)
2002年 『私たちの倫理読本』(地歴社)、『私たちの政治経済読本』(地歴社)
2003年 『高校生の平和アピール』(平和文化)
2004年 『「日の丸・君が代」処分』(高文研)、『良心的「日の丸・君が代」拒否』(明石書店)
2005年 『「憲法改正」きみたちはどう考えるか』(平和文化)
2015年 『18歳からの選挙Q&A』(同時代社)
2016年 『18歳からの政治選択 平和・人権・民主主義のために』(平和文化)
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